カモシカロングトレイル

トレイルランニング・登山・マラソンの雑記。頭のちょっと変な人用。

サバイバルブランケットに関する簡単な考察

サバイバルブランケット。

エマージェンシーシート、などとも呼ばれ、主に登山やキャンプ、トレイルランニングなどに使用されている。

しかしながらこのサバイバルブランケット、そもそもは軍事用品の一つであり、更に元を辿れば、人工衛星や宇宙ステーションを太陽光や熱波などから守る為の遮熱シートとして開発されたものである。

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こうのとり6号機 三菱電機

 

金属膜が遮熱性を高めるだけでなく、輻射熱により保温性も上げる事から、緊急の人体保温用に転用がなされたもので、所謂「NASA発」の先進的な素材であった。

 

このシート、一見薄いアルミ箔の様であるが、アルミ箔がアルミを圧延したものであるのに対し、サバイバルブランケットはPPやPETフィルムにアルミを蒸着したものである。

蒸着、というと聞きなれない言葉であるが、簡単に言うと「蒸発させて付着させる」という工程のことをこういう。いわゆる、メッキの一つである。

 

さて、ではこのアルミ蒸着フィルム、どうやって製造されているのか、であるが、これは専門のロール蒸着機を使用する。

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アルバックの巻取り式真空蒸着装置

主にロータリーポンプ、メカニカルブースターポンプという真空ポンプを使用して真空度を上げ(=気圧を下げ)、真空タンク内で金属を熱源により溶解・蒸発させ、ロール間を走行させているフィルム(実際にはクーリングキャンロールという巨大な冷えたロールに密着させた状態のフィルム)に付着させるのである。

ただし、アルミニウムは他の蒸着向きの金属(銅や亜鉛)と比較して高真空下での継続溶解・蒸発に難があり、ロータリーポンプ、メカニカルブースターポンプの他に、更に油拡散ポンプ(油の分子で物質を捕まえて真空度を上げるポンプ)を使用し、更に真空度を上げてはじめて、安定した蒸着を行うことが出来る。

 

ここまでしてアルミニウムをサバイバルブランケットに使用する理由は、やはり物質安定性の高さ、である。

銅や亜鉛は酸化しやすく、酸化すると特性が著しく変化し、また、蒸着した金属も水にも溶けだしやすい為、濡れるだけで簡単にフィルムから剥がれてしまう。

よってアルミを触媒として更にその上に亜鉛や銅を乗せていくのだが、それでもやはり、トップコートなしではかなり貧弱な皮膜となってしまう。

 

対してアルミはそもそも酸化しずらい上に酸化被膜の形成によりそれ以上の酸化は進まず、さらに金属蒸気のフィルムへの付着性・耐久性は群を抜く。

こういった事柄から、アルミがサバイバルブランケットの材料に選ばれている次第である。

 

また、上市されているサバイバルブランケットにはPPとPETフィルムと2種類が存在するが、一般的な特性として、柔らかく伸びやすいが折れ目が付きやすく、穴の開きやすいPPに対し、伸びず、折れ目も付きにくいが裂けやすいというPETの特徴は抑えておくべきだろう。

 

とはいえ、購入時にこれらを選択できるはずもなく、商品ごとの素材は私も把握していない。

実用性の中で、どちらも「使い捨てである」という大前提がある為、やはり耐久性に気を留める必要性は薄い、とも言える。

それに最近は先進的な「混ぜ物」を足して、高度な実際使用性能と特性を持ったPPフィルム、PETフィルムも開発されているので、PPだのPETだのと、一概には言えなくなっている、という事も付け加えておこう。

 

サバイバルブランケットの使い方であるが、最も保温性の高いのは、輻射熱を最大限利用できる、身体に「ほぼ」密着させた使い方である。

 

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「ほぼ」というのは、皮膚と密着してしまうと空気の層(断熱層)が無くなる為、輻射熱による保温性のメリットを断熱層の喪失というデメリットが上回ってしまうからである。

よって、最も効果的な使用方法は「薄いシャツの上にふんわりと巻く」使い方である。

ジャケットなどの分厚い服の上に巻いたところで、輻射熱の効果は低い。

フィルム一枚の気密性によって温かい空気が逃げなくする、という程度の効果しかなくなるのである。

そういう意味では、トレイルランニングの様な薄着での使用でこそ、効果を最大限に発揮する。

使った事の無い方は、一度使用してみると良い。確かに温かいが、湿気を逃さない為、次第に結露して濡れてしまう事が多い。だからこそ、「ふんわりと巻く」事が重要である。あくまで輻射熱を利用し身体を暖めるのである。

気密を取るために使用すると、結露し、体が濡れ、むしろ身体が冷えてしまう可能性さえあるのである。

ちなみに、アルミ箔、アルミホイルは製造段階で必ず小さなピンホールが出来る為、実は通気性があるのである。

これは現在まで大量生産的技術においては解決されていない。

 

また、フィルムの片面に蒸着されている為、表裏も存在する。より光沢のある方が金属の蒸着面である。

しかしながら、使用されるフィルムの厚み程度では輻射熱を遮る性能は寡少な為、表裏、どちらで使っても実際には支障がない、といえるだろう。

 

アルミの蒸着密度であるが、通常は透過率でコントロールされる。

これはいわゆる、サングラスなどの「透過率」と同じである。

通常は3%を下回ればほとんど輻射熱、遮熱性、どちらも性能はさほど変わらない。

逆に1%を下回ると、蒸着時にフィルムに対する熱ダメージが大きく、突沸によるピンホールや、フィルムの耐久性の低下、組成の変化などを生むため避けられる。

放射線を遮るような超高性能を求めない限りは、サバイバルブランケットは通常透過率1.5%~3%程度で蒸着されているようだ。

 

ただし、中国製がほとんどになった現在、透過率の高い、性能の著しく低いサバイバルブランケットも多いという。

透過率が高い、つまりアルミの密度が低いと、性能低下(主に水への溶けだし)が発生しやすいし、そもそも最初から性能が低い。

また、粗雑な作り方をするとフィルムの耐久性にムラがあり、万が一の時に使用に耐えない、というものも存在するかもしれない。

 

また、フィルムに金属を蒸着すると著しく引っ張り強度、引き裂き強度が増すため、そういった意味でも、軽量化と保温・遮熱性、気密性を得られる、非常に優れたアイテムであると言えるだろう。

 

ということで、レースだからといってサバイバルブランケットを持たないなんて、本当にもったいないのですよ。

軽量化を目指したいなら体感部の部分に巻く分だけでも良いので、持っていくと超安心だと思います。

おさらいですが、サバイバルブランケットの価格差は

  • 蒸着アルミの密度
  • フィルムの耐久性
  • トップコートの性能

にそのまま響いてきます。

どれだけその性能差が生命維持に関わってくるか、までは私も把握していませんが、考慮に入れて良いことだとは思います。

 

 

うーん、落ちが思い浮かばない!おしまい。