カモシカロングトレイル

トレイルランニング・登山・ULハイク・マラソン。書き捨て御免。※本ブログはプロモーションが含まれています。

4100D野沢温泉のレース中遭難に日本トレイルランナーズ協会が出した見解について

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2019年7月14日に発生した、The4100d マウンテントレイルin野沢温泉での遭難事件。

 

以前このブログでも取り上げましたが、現在まで、遭難した方は発見されていません。

当初から遭難時の状況や捜索の進捗の詳細が公表されず、日本中のランナーたちからは詳細な事故報告や今後の対策の発表を求める声、中には運営の責任を問う声などが上がっていました。

 

あれから3か月。

2019年10月25日、トレイルランナーズ協会が、件の事故に対して、声明を発表しました。

trail-runners.net

 

何度も読んでみましたが、読み込んでみても、協会員の皆さんの当惑と苛立ち、不安が透けて見えるばかりで、我々が思うような、協会としての対策、今後の指針はないように感じます。

 

読んでいて特に気になったのは

 

台風、大雨などの極端な気象が日常化していますが、アウトドアでは大会・イベント参加であっても、個人・グループでの活動であっても、自分の身は自分で守ることが必要です。

その山の情報をもとにした無理のないプラン、そして十分な装備を用意しましょう。山で不測の事態が起きたとき、あなたはその身と携行している道具だけで切り抜けなくてはなりません。

ときには出かけないことが最良な場合もあります。

 

という点で、要は「自己責任だよ」を遠回しに言っているように読めます。

これは「しっかりと準備と装備をしろ」という強い警告であると同時に、逆を返せば「わたしたちの責任じゃないよ」とも取れてしまいます(法的にはその通りなのかもしれませんが)。

 

確かに、そう言いたくなる気持ちも分かります。

 

山岳技術・経験がほとんどない参加者もたくさんいます。

装備が明らかに実力に対して不足している参加者もいます。

必携品を持たない参加者・・・これすら、ごく少数だとは思いません。

 

ランナーの問題点として

  • 観光客も多いトレイル程度しか走ったことのないランナーも多く、道迷いに弱い
  • セルフレスキュー技術、装備の無い参加者が多く、トラブル時に危険
  • 地図読みが出来ない、GPS端末・アプリを使いこなせない、もしくは地図も地図アプリすら持っていない人もいる
  • ココヘリや山岳遭難時の保険など、万が一の命を救う備えを持っていない選手もいる
  • 必携品すら持たない選手がいる

 もしこういった現状を放置すれば、恐らくどんなにレース主催者が注力しようとも、帰宅する事の出来なくなるランナーは出てくると思います。

だからこそ、レースの概要やHPにおける、主催者からランナーに対する注意が強い表現になってきているのではないでしょうか?

 

かといって、参加者を実力で選別したり、全てのランナーの装備をすべてチェックするほどの労力をかけるのは、当然コストアップに繋がりますし、それはランナーにとっても喜ばしい事ではないはず。

それに、厳しくし過ぎると、競技人口の減少に繋がりかねません。

 

また、事故の要因は、ランナーだけにあるのではない、と私は思います。

 

例えば、レース、コースの問題点。

  • 低山の、地形の読みにくい山域で行われる事が多い
  • エスケープルートが少ない大会も多い
  • 後半に難易度の高いトレイルを通るなど、危険なコース設定のレースもある
  • ITRAのポイントを求めたり、100キロなどの切りが良い数字にするためかも知れないが、距離を伸ばし過ぎて、整備やコースマーキングが行き届かない事がある
  • 当たり前だが、里から離れた山岳地帯で行われるので、救助が遅くなる、困難である

トレランのレースを開催するトレイルは、人気の登山道と比べたら、明らかに迷いやすいルートを通る大会ばかりだと思います。

更に大会には山の猛者ばかりが集まるわけもなく、やはりある程度の初心者にも対応したコース設定や整備を行う必要がある、とも思います。

実際、大会によってマーキングの多寡はありますし、GPS無しで迷ったらちょっとコース復帰に難儀するような、特徴のない山容で開催される事が多い。

そういった事を承知の上で、レース開催に熟達した主催者ばかりならよいのですが、実際は主催者によって力の差もある気がしてなりません。

 

主催者側の問題点(想像)

  • レースのコース以外の山域の地形を熟知している人が少ない
  • いざというときに動ける、頼れる後詰めの人員がいない場合がある
  • スタッフの配員、指示、指導や物資準備など、主催者にディレクション能力が不足している場合がある

 以上の様な問題を抱えるレースもあるのではないでしょうか。

 

そういった意味で、やはり最低限の安全性を保障する、なんらかの策が必要だとおもいます。

例えば、協会でレース管理者やコースリスクアセスメントの資格試験を作り、有資格者が直前にコースを走り、リスク確認を必須とする。

トレランに関わっている人の中には、山岳経験の豊富なランナーや、登山ガイド顔負けのランナーも多数います。

そういった方に、明確に分かるように、有資格者になってもらう。

そして資格制度があったら、その資格を使って収入を得ることが出来るのなら、日本のトップランナーの一人にも関わらず競技で食べていけない、という方々が多い、この現状を変えるきっかけに、新しいお金の流れを作るきっかけにもなるかもしれません。

また、その資格取得時の申込金は協会の収入にもなります。これは本当に大きいです、5万円×年間100人でも、何もないところから500万円ですから。

多くの業界団体が資格を創出する理由がコレです(一時期深く関わっていたのでよくわかります)。

 

また、コース管理として、距離によってコースマーキングの設置数、距離や参加人数に合わせてスイーパーや救護ランナー、マーシャルランナーの数を規定するなどの方策が考えられます。

トレランのレースの安全性を、最低限保証する数字を示し、今後のレース運営の新規参入者への指針とすることができるのでは。

 

また、ランナーの装備ですが、

  • 地図とコンパスorGPS端末(地図アプリを入れたスマホ含む)を必須とする。
  • もしくはゼッケンの裏などに地図を印刷・コンパスを参加賞として配布する。
  • 道迷いなどの遭難時の対応方法をゼッケンに記載する。
  • ココヘリ・捜索保険必須とする

などの方策が考えられますが、実際の所、必携品すらもたない方が多数いる現状、あまり効果的ではないのかもしれませんが・・・。

 

他にもこの3か月、ぼけーっと色々と考えていました。

レース開始直前にエマージェンシーセットを参加賞として配布する(捨てると失格)とか。

 

コース上に点々とバルーンを打ち上げておいて、道迷い時、復帰しやすくするとか。

 

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recco
の様なシステムをゼッケンにつけられないか、とか。

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お金を払ってITRAのポイントを認定してもらうよりも、お金を払って安全性を認定してもらう方がずっと将来の為ではないのか、とか。

 

とにかく、そろそろ主催者個々の力量、ランナー個人の力量のみに依存する体質から脱皮すべきだと思います。

もちろん、究極的には、山のアクティビティは全て自己責任。

しっかりと自分の命は自分で守る、というのが、大前提ですが。

 

こういうのはアクセス数、全然伸びないのも知ってる!でも、書いて考えをまとめておきたかったのです。誰も読まなくても、ね。

 

また最後まで真面目な記事でした。