それでは「トレランは通常の登山よりも危険」というのは本当でしょうか。
この「トレランは危険」という意見には、「トレイルランナー自身が危険」というのと、「他の登山者にとってトレイルランナーが危険」という2つの意味合いが含まれていると思います。
同じ人間が同じ山にいくとして、トレイルランニングは、通常の登山に比べて危険なのでしょうか。
まず自分自身の経験から言うと、トレランスタイルで走っていくからと言って、危険度が増す、というのは実感したことがありません。
躓く、転びそうになるのは歩いているときの方がずっと多いです。
しかもなんでもない平地で。
実際にトレイルランニング中の事故・遭難の例を見て行っても、転んで滑落、というのはあまり見当たりません。
FTR100では滑落事故でお亡くなりになった方がいらっしゃいますが、これは体調不良からの滑落だろう、ということです。
ただ、少数ですが、六甲山や鎌倉でトレイルランニング中に亡くなる、という事故がありますし、そのほかヤマップやヤマレコなんかでも滑落の報告があります(だいぶ探しました)。
どれも見て思うのですが、「単独、下り、崖。」ということです。
亡くなったケースは不明ですが、そうでないものは下りで、かつ「走っていた、飛ばしていた」と書かれている物が多いです。
単独で、崖を、下りの勢いに任せて走るべきではない、というのが分かります。
それに、それらの少数の事故報告を見た中からでしかないので、全部がそうではないでしょうが、「登山経験の無いトレイルランナー」が目立ちました・・・。
登山をしていると、ヒヤリハット経験は無数に蓄積されていくので、走力があっても、山の経験が少ないうちは、単独ではスピードを出すべきでは無いと・・。
そう思います。
また、装備も同じく、「登山経験の無いトレイルランナー」は貧弱なケースが散見されます。
例えば失うものがあんまりない私ですら、ツエルトもホームトレイル以外では必ず持っていきますし、ホームでも必ずサバイバルブランケットは持っていきます。
水や食料も万が一を考えて持っていきます。
思うに、登山の経験があるトレイルランナーなら、安全装備をおろそかにする人はかなり少ないのではないでしょうか。
登山をしている間に、安全装備は勝手に増えていきますし、やはり雨天時の低体温の恐怖、蒸れからくる疲労、疲労時の判断力の低下、気を抜いた時の危険など、無数に感じるものです。
登山経験のないままトレイルランニングを始めると・・・
- 山の装備が不足・・・ツエルトやピンチ缶、雨具や着替えなど
- 山の知識が不足・・・読図、水場、気象やルール、マナーなど
- 山の経験が不足・・・ルートファインディング、足の置き場の勘どころなど
全部不足しているわけで、これは登山初心者でも同じわけなんですが、やはり体力がある分、ガンガン行ってしまうし、甘く考えてしまうのでは。
あの川内優輝さんや有森裕子さんも、ランニングの練習の一環としてトレイルを走っていて、遭難寸前になったと語っています。
やはり、山に行くからには山の準備をしていくべきだと痛感します。
ただ、著しく体力の無い層を内包する通常の登山と比較した際に、よりトレイルランニングの方が危険、というのは総数的にも割合的にも、言えないのだと思います。
しかし、一番の問題は、「他の登山者にとってトレイルランナーが危険」ということです。
これは否定できません。
実体験でも何度もそう思いましたし、富士山を猛スピードで一般登山者を掠めながら走る動画が、ネット上で炎上した例もあります。
レースで一般登山者がどいてくれているのに挨拶さえせず走って通りすがる人。
北アルプスの見通しの悪いシングルトラックを猛スピードで駆け降りる人。
落石上等な人。
たくさんいます。そりゃ、批判されますよ。
走ってすれ違ってぶつかったら相手はどうなるか。
ちょっとは考えろよと。
だからトレイルランナーは一度立ち止まって、歩いて通るか通って貰うか確認してからすれ違うべきだし、追い越しもある程度後ろから余裕を持って声掛けしてから歩いて追い越すべきです。
レースでも。
こっちからしたらたった一組のハイカーかもしれませんが、レースにかち合ったハイカーからしたら何百人にも道を譲っていたらとんでもないタイムロスですし。
町で交通ルールを守るのと一緒です。山に行くなら山のルールに従うべきです。
これから山を走ろうと思ってる皆さん!
山のルールとマナーを守るだけで、他の登山者に与える危険は激減するんですから、山のルールは絶対に守りましょう。
現状では「トレラン野郎は危ない!」と言われても、仕方ないです。